食欲が落ちた時、どうしたらいいの?
在宅療養している方が、食が細くなってしまうと心配になりますよね。
ここでは、食事の量が減ってしまった時に注意すべきこと、対応について述べたいと思います。
食事の量が減る場合、いくつかのパターンに分けられます。
■急に食べなくなってしまった、元気がない
まず最も注意すべきなのは、昨日まで元気に食べていたのに急に食欲が落ちた時です。元気がない、反応が鈍いなどがある場合はさらに注意が必要です。
この場合は肺炎や尿路感染症など何らかの感染を起こしていたり、身体に異変が起こっていることが考えられます。
対応としては熱、血圧、脈拍を計りましょう(「熱が出ちゃった!どうしたらいい!?」の内容もご参考下さい)。いずれにしても早急な診察が望まれます。
主治医の先生、訪問看護さんなどにご相談下さい。
■元気はあるが段々と食べなくなってきた
頻度としてはこのパターンが多いかと思います。
ご高齢の方はちょっとした体調の変化で食事量が減ってしまいます。
まずチェックすべきは、水分はしっかり取れているか、排便はきちんと出ているか、睡眠は取れているか、痛みはないかです。これらに当てはまる場合、その対応を行うことで改善が見られる場合があります。
入れ歯を使っている方では、擦れて痛いなど入れ歯が合っていないことが原因になり得ます。訪問歯科さんに調整してもらうなどの対応で改善できます。
また、高齢になるとどうしても噛む力や飲み込む力が弱まってきますので、これまで通りの食事では疲れてしまいます。一度柔らかい食事を試してみてもよいかも知れません。インターネットでは作り方も載っていますし、業者さんの宅食もあります。
■認知症のある方
認知症のある方の場合、①脳の機能の衰えにより食べ物が認識できない、②食べ方を忘れてしまう、③食事に集中できないといった要因で食事量が減ることがあります。
対応としては、①の場合、匂いを嗅がせたり声かけするなどして食べ物と認識してもらう、②の場合、箸からスプーンに変えてみたり食器を変えてみる、③の場合は集中できる環境を作るなどです。詳細はまた別項目(「認知症の方の食事の摂り方」)で述べさせて頂きます。
■それでも長期に改善がない場合
医療的な介入が必要な場合が考えられます。具体的にはお薬の副作用であったり、胃腸の問題であったり、癌が隠れている場合などがありますので、一度主治医の先生へのご相談をお勧めします。
また、最終的に考えておかなければならないのは老衰です。
老衰は、現代の医学では治療法がなく、回復が見込めない状態です。人間誰しも、いつかは必ず最期の時が来ますが、もしその時期を遅らせる選択(いわゆる延命治療)をするならば人工栄養(胃ろうや中心静脈栄養など)という選択肢がありますし、自然に見ていくのも選択肢です(「延命治療、する?しない?」の内容もご参考下さい)。
いずれにしてもメリット、デメリットがあり、正解はありません。ご本人様の意思が確認できれば最善ですが、予めご関係の皆さんで話し合っておくのが良いと思われます。
「むくみ」はどうやって対処したらいいの?
むくみは、在宅療養でよく目にする症状の一つだと思います。しかし一方で、むくみ=何かの病気というイメージがあるのではないでしょうか。
ここでは、むくみを見たときにどんなことが考えられるのか、どんなことに気を付けたらいいのかについて述べます。
まずは、「いつからなのか」「両足にあるのか、片足にしかないのか」を把握して頂ければと思います。
1. 両足のむくみ
「むくみは内臓の病気のサイン」とよく言われます。確かにそういった場合もあります。具体的には、心臓、腎臓、肝臓の病気が有名です。その他、貧血、ホルモン異常、栄養失調(かっけなど)でも起こり得ます。
しかし、実際にはこれらが原因であることは頻度としては少なく、最も多い原因は「静脈弁不全」というものです。もともと私たちの足の静脈には、重力で血液が溜まらないようにするために逆流防止弁が付いています。それがご高齢になると老化により弁が壊れてしまい、血液が足に溜まりやすくなってしまいます。
静脈弁不全の場合は有効な治療はなく、弾性ストッキングをはく、できるだけ足を挙げておくくらいしか対処がありませんが、逆に言うと命に関わる病気ではないため過度な心配は不要です。安易な利尿薬の使用は逆に脱水を引き起こす場合もあります。
ただし、もちろんむくみが重大な病気のサインであることもあります。
顔や体など全身のむくみ
体重増加
動いた時の息切れ
夜間の息苦しさ
咳や痰の増加
尿の量が減っている
顔色や手のひらが蒼白
などの兆候を伴う場合には主治医の先生に早めにご報告して下さい。
あと、忘れてはいけないのはお薬が原因となることもある、ということです。
代表的には高血圧の薬である「カルシウム拮抗薬(例. アムロジピン)」や、鎮痛薬です。これらの薬を飲んでいる方の場合は一度主治医の先生にご相談してみて下さい。
2. 片足のむくみ
この場合でよくあるのは、お腹の中のがんなどを手術したことがある方に、術後から見られるむくみです。これは「リンパ浮腫」といってリンパの流れが手術の影響で滞ることが原因です。これも根治治療はなく、やはり弾性ストッキングや足を挙げることで対処します。
片足のむくみで注意しなければならないのは、「深部静脈血栓症」という病気です。エコノミークラス症候群という名称の方が一般的かと思います。
これは、足の深い静脈に血の塊ができ、それがちぎれて飛んで、肺の血管に詰まることで呼吸ができず、最悪の場合命に関わる病気です。長時間同じ姿勢でいたり、脱水傾向の時に起こりやすくなります。痛みを伴う場合もあります。
熱や赤み、痛みを伴う片足のむくみは、「蜂窩織炎」という細菌感染症も考えられ、早めに抗生物質で治療する必要があります。
今までなかった片足だけのむくみが急に出てきた時には主治医の先生に早めにご報告して下さい。
3. 終末期のむくみ
最期の時期が近くなるとむくみが出てくる方がよくいらっしゃいます。これは栄養状態や心臓の状態など色々な要素が関わっています。最期が近いとどうしても起こり得ることですので、ご本人が辛くなければ無理に治そうとしなくても大丈夫です。もし点滴をしている場合は、点滴を減らす、もしくは止めることで改善が見込めるかも知れませんので、主治医の先生と相談してみて下さい。
また、この時期はむくみが強いと褥瘡ができやすくなるので、エアマット導入など圧がかからない工夫が必要です。
以上、在宅療養で遭遇するむくみについて述べさせて頂きました。
一言にむくみといっても、様子をみていい場合、治療が必要な場合があります。その他の注意すべき兆候がないか、慎重に観察されることをお勧めします。
熱が出ちゃった!どうしたらいい!?
在宅療養をしている中で、最も良く遭遇する症状の一つが発熱です。
しかし、熱にも様子を見て良いものからすぐに受診した方が良いものまで、原因がたくさんあります。
ここでは、熱が出た時に慌てないよう、注意すべき事柄について述べさせて頂きます。
まず、チェックすべきは「いつから」「何度くらい」の熱が出ているのかです。
印象としては、39℃台の熱が突然出た場合には早期の対応が必要なことが多いです。
一番注意すべきなのは、細菌による感染症です。在宅で頻度が多いのは肺炎、尿路感染、褥瘡の感染などです。抗生物質を使うことで良くなりますが、放っておくと重症化する恐れがあります。
以下に該当する場合は細菌感染症の可能性が高いと思われます。
寒気がしてガタガタ震えている
元気がなくて反応が鈍い
食欲が極端に落ちている
上の血圧が何回測っても100未満
脈がいつもより30回以上速い
呼吸が荒く苦しそう
痰が絡む咳が増えた
尿が濁ったり血が混じったりしている
赤く腫れている箇所がある
これらのサインが見られる場合にはすぐに訪問看護や医療機関にご相談下さい。
一方で、熱が出ていても心配ない場合も多いです。
よくあるのが、いわゆる風邪と言われるウィルス感染症、脱水や室温の影響といった原因です。また、飲み込みの力が落ちている方では、明らかなムセがなくても少量の誤嚥(肺に食べ物や唾液が入ってしまうこと)で熱が出ることがあります。この時、熱はあくまで一時的なもので自然に治ります。
これらの場合、37℃台程度の微熱であって、ご本人の活気もあるようなら、水分を多めに取ってもらい、場合によっては解熱薬も使いながら様子を見ることも可能です。
熱が出たときの対応について、主治医の先生と予め相談しておきましょう。