在宅お役立ち情報

care-eco's magazine

2020/12/08

効果的な情報共有の方法

在宅生活を支えていくにあたり、多職種間の情報共有が重要であることは多くの皆様にご同意頂けるのではないでしょうか。

例えば、日頃の病状や突発的な出来事を医師に伝えたり、訪問看護が来られた時のご様子をケアマネジャーさんが把握されたり、ケア会議の日程調整など、伝えるべき内容はたくさんあると思います。

では、皆様は実際にはどのように情報共有をされておられるでしょうか。


従来、情報共有には以下のような方法が使われてきたと思います。

・FAX

・電話

・連絡ノート

・電子メール

しかし、実際に私もこれらを全て経験しましたが、これらの方法にはそれぞれ欠点があります。

FAXは最もよく使われているツールですが、これはFAXの機械が近くにないとすぐに確認できません。文章を書いたり送信するのも手間がかかります。また、紙が基本なので紛失することもありえますし、誤送信のリスクもあります。

電話も多いかと思いますが、お互いに訪問が多いとまずすぐにはつながりません。夕方になってようやく連絡がつくということもよくあります。また、文書には残らないため、後から見返すことができないという欠点もあります。

連絡ノートは、利用者様のご自宅に一冊おいて、訪問した職種の方々がそれぞれ書き込む、交換日記のようなものです。一見良いコミュニケーションツールに思えますが、最大の欠点はご自宅に訪問しないと見ることができないという点です。そのため確認まで時間がかかってしまったり、事前に準備ができなかったりします。また、書き忘れたことを後から思い出す、ということもよくありました…。その点、電子メールはこれらの欠点を補うことができますが、他のメールに大事な情報が埋れてしまったり、未読・既読が分からないなどデメリットもあります。


そこでおすすめしたいのが、ICT (情報通信技術)を使ったオンラインでの情報共有です。この特に良い点は、端末があればいつでもどこでも情報共有ができることと、写真も載せられることです。

ICTというと難しそうな印象があるかも知れませんが、要はLINEのようなものです。有名なのはメディカルケアステーションというツールですが、その他にも色々と種類があります。中には自治体で採用しているものもある場合がありますので、一度確認してみてはいかがでしょうか。


ただし、ツールがあってもそれを便利にするか、逆に煩雑にしてしまうかはルール次第です。

私の経験上では、関係する事業所同士である程度ルールを設定することが必要です。

例えば、在宅医の立場としては、

・緊急を要する場合(1日待てない場合)には電話を頂く

・処方を変更した場合には共有する

・訪問の様子は変化があった時だけ共有頂く

・共有の内容はもともとある訪問日誌のコピーや写真のアップでも可

などです。コツはなるべく二度手間を無くすことです。私も電子カルテの記載をコピペしたりしていました。


ICTによる情報共有を取り入れたことで、効率的に、よりきめ細かいケアが提供できるようになったと感じます。

最初はなかなか大変かと思いますが、慣れてしまえば便利になります。まだお使いになっていない方々もぜひトライしてみて下さい。


2020/12/18

なぜ在宅療養で医療介護連携が必要なのか?

■別の領域として語られてきた医療と介護 

「医療と介護とは、在宅生活という車を走らせるための両輪である。」

私はそのように思っています。

しかし実際には、医療と介護はこれまで別の領域として語られることが多かったかと思います。

今となってはお恥ずかしい話ですが、実際私も病院に勤務している時は介護の領域に関心がなく、知らなくても何とかなっていました。

それはなぜだろうと改めて考えてみたところ、それは成り立ちの歴史にあるのでは、という一つの考えに思い至りました。

医療は、医療法の第一条に書いてある通り、健康の保持、つまり病気がない状態を維持することが根底にあります。現在の医療法が成立したのは、まだ戦後間もない昭和28年で、この時代の医療の役割はとにかく医療水準を上げ、元気に働ける人を増やすことでした。

それ以降、病院はいわば「修理工場」として生活とは切り離されたところにありました。そして「修理」が終わればまた生活の場に戻る、という流れができました。

しかし、その後だんだんと高齢化が進むにつれ、従来の制度では限界があり、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態」、つまり生活において介護が必要となった方を対象とした介護保険法が平成9年に成立しました。

このように、医療と介護ではそもそも背景が異なっているということが、これまで医療と介護が分離してきた原因ではないかと思います。

私もそうでしたが、医療者は治らないこと(例えば老衰で食が細くなったり)を「敗北」と捉えてしまいがちで、そのため「手を尽くしましたがだめでした。あとは介護の問題ですから、よろしくお願いします。」となってしまいます。


■これからは「個人の尊厳の保持」を共通の目標に

しかし、人口の4人に1人がご高齢の方という未曾有の大変化の時代になると、当然状況も変わってきます。

在宅では、医療、介護ともにその方の生活の一部となります。

それぞれが今までの価値観に沿って、独立してそれぞれの仕事を行なっていくのではご本人にとって不利益となってしまいます。

私は在宅医療の経験を通じて、これからの時代に必要なことは、医療法、介護保険法両方に書かれている「個人の尊厳の保持」を皆の共通の目標とすることだとと思っています。

私たち医療者は、介護のプロにはなれません。しかし、在宅生活で「個人の尊厳を保持」するためには介護のことも知らなくてはなりません。

また逆に、介護に関わる方々にも医療のことを知ってもらえたら、ご本人の生活の質もより良くなるかも知れません。


まだまだ難しいですが、皆様と一緒に「すべての人が最後まで尊厳を持って暮らせる世の中」を創っていければと、そんな風に思っています。


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