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care-eco's magazine

2021/02/13

【新型コロナ】ワクチンのホントのところ

ピークは過ぎたように見えるとは言え、まだまだ気を付けなければならない新型コロナウィルス(2021年2月現在)。
ワクチンもいくつか開発され、間もなくワクチン接種開始の方向で進んでいます。
日本に住む全員が打てる日まではまだ時間がかかりそうですが、皆さまの中にも打つべきかどうか迷っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
今回は、新型コロナのワクチンについての情報をまとめたいと思います。

■ワクチンって何?
そもそもワクチンとは何でしょうか。
一言で言うと、「免疫(体内に侵入した病原体を退治する仕組み)を人工的に作る」ものです。
以前、免疫には大きく2種類あることをお話しました(「【新型コロナ】抗体さえあれば大丈夫?」をご参照下さい)。ワクチンは、兵隊(白血球)が飛び道具を用いて外敵を倒す、つまり抗体を作るために使います。
ワクチンにはいくつか種類があります。

1.不活化ワクチン
細菌やウィルスなどの破片(抗原といいます)を体内に入れることで、その破片に対する抗体を作ります。破片だけなので安全性が高いです。インフルエンザや肺炎球菌など多くのワクチンが該当します。

2.生ワクチン
弱っているが生きている細菌やウィルスを体内に入れることで抗体を作ります。本物の病原体を入れるため効果は高いですが、ごく稀に本当の感染を起こすことがあります。
水ぼうそうやはしかのワクチンが該当します。

3.mRNAワクチン
新しい種類のワクチンで、今回初めて実用化されました。mRNAというのは、私たちの体を構成するタンパク質(体の部品)の設計図で、DNAから作られます。
大ざっぱに言うと、ウィルスのmRNAを体内に入れ、それを元に人間の体の中でそのウィルスの部品を作ります。そして、その部品に対する抗体を作るという仕組みです。
利点としては、不活化ワクチンよりもかなり早く効果的なワクチンが開発できるという点が挙げられます。

■新型コロナのワクチンはどんなワクチン?
つい先日、日本でもファイザー社製のワクチンが承認されました。
これは先ほどのうちのmRNAワクチンに該当します。

■効果はどれくらいあるの?
効果を検証した研究では、予防効果は95%と示されました。
これは、例えばワクチンを打たずに100人感染すると仮定すると、そのうち95人はワクチンを打てば防げる、という意味です。インフルエンザワクチンの効果がおよそ60%と言われていますので、それと比べると高い効果が期待できることが分かります。

■安全なの?
今のところ大きな問題は見られていません。
打った後の腕の痛みが最も多く、7~8割の方に見られますが、1~2日で自然に治ります。
この症状自体はどんなワクチンでも起こります。
残念ながらアナフィラキシーという重症のアレルギーが起こる方が稀に(5人/100万人)おられるようです。インフルエンザワクチン(1~3人/100万人)と比べると若干多いですが、何倍も多いわけではありません。
ウィルスのmRNAを体内に入れる、と聞くと「大丈夫なのか?」と思われるかも知れません。しかし、mRNA自体はすぐに分解されますので、人体には影響しないと考えられています。
ただ、新しい種類のワクチンのため、長期的な影響を慎重に見ていく必要があります。

■誰が打つの?
対象年齢は16歳以上とされています。
ご高齢の方やご病気をお持ちの方は、新型コロナに感染すると重症化しやすいため、積極的に打つことをお勧めします。

■打ってはいけない人はいる?
ポリエチレングリコールという成分が含まれているため、この物質に重症のアレルギーのある方は避けるべきです(化粧品や皮膚クリームに含まれています)。
妊婦さんは、海外では打っていけないわけではありませんが、安全性はまだ確認されていません。
また、血が固まりにくくなるお薬を飲んでいる方は、ワクチンを打った後よく止血した方がよいので必ず申し出て下さい。

これまでにない新しいワクチン、と聞くと心配になるかも知れません。しかし、在宅療養をされている方々は、新型コロナに感染した時の方がリスクは大きいと考えられます。ワクチン接種を積極的に検討しましょう。

2021/01/04

【新型コロナ】抗体さえあれば大丈夫?

 新型コロナウィルスが初めて中国・武漢で確認されてから1年が経ちました。残念ながら、新型コロナウィルスは私たちの生活に入り込んでしまっています。 

しかし、一方で1年前には全く分からなかったことが少しずつ分かってきたことも事実です。最近ではワクチンが開発されたという、希望の持てるニュースもありました。ワクチンに関連して、「抗体」という言葉をよく耳にするようになったかと思います。また最近では身近で抗体検査を受けることも可能になってきました。今回は、「抗体」についてお話したいと思います。


■抗体とは?

抗体とは、免疫作用の一つです。

ヒトの免疫作用にはいくつか種類がありますが、大きく分けると、


①兵隊(白血球)が直接外敵を食べる、

②兵隊(白血球)が飛び道具を用いて外敵を倒す、


の2つに分かれます。この②で使われる飛び道具は、敵ごとによってカスタマイズされたものになります。この武器がいわば抗体です。つまり、抗体とは敵の弱点を正確に突く、弓矢のようなイメージです。

この武器はまず敵を研究してから作られますので、抗体ができるには敵が体内に侵入してから時間がかかります。逆に言うと、あるウィルスに対して抗体があるということは、そのウィルスが一度は体内に侵入したことを意味します。

抗体はタンパク質でできており、いくつか種類があります。代表的なのがIgMやIgGと呼ばれるタンパク質です。通常、感染して数日後からIgMが増え始め、少し遅れてIgGが増えます。その後、IgMは減りますが、IgGは長期間残る、というパターンが一般的です。ワクチンを打つと、この抗体が人工的に体内で作られ、免疫作用を発揮するのです。


■抗体があれば大丈夫なの?

では、抗体さえできればもう二度と新型コロナウィルスにかからないのでしょうか?

実は、抗体が陽性であっても新型コロナウィルスにかかる可能性はあります。

一口に抗体と言っても、その働き方にはいくつかあります。その一つが、「中和」と言って、ウィルスを無力化する働きで、この抗体があればウィルスを撃退することができます。しかし、新型コロナウィルスに対する抗体は一つではなく、いくつか種類があります。どういうことかと言うと、ちょっと想像しにくいかも知れませんが、ウィルスはいくつかの部品(核酸やタンパク質)から出来ています。抗体は、この部品ごとに作られるのです。そして、これらの抗体は、あっても敵を撃退する機能を持たないことが多いのです。

また、有効な中和抗体がせっかくあっても、量が不十分だと感染は防げません。

例えば、同じくウィルスである麻疹や風疹、B型肝炎などは、抗体があっても数値が低いと感染を起こしうるため、ワクチンを再接種することがあります。

それでも、人の記憶のように、時間が経つと抗体の量が減ってしまうこともあります。

実際、新型コロナウィルス抗体検査が陽性であった人が約6か月後に再感染を起こした事例の報告もあります。

治験の結果からは、短期的にはワクチンに期待が持てることは間違いないですが、この効果がどれほど持続するかはこれから検証が必要です。


■抗体陽性でも油断せずに感染対策を

まとめますと、有効な抗体が十分にあれば新型コロナウィルスにはかからない可能性は高いですが、抗体陽性であっても中和抗体が十分でなかったり、感染から時間が経っていると再感染するリスクはあります。

検査で抗体陽性であったからといっても、残念ながら油断はできません。

やはり、マスク、手洗い、3密を避けるといった基本的な感染対策を徹底する、ということが重要になります。


2020/12/20

新型コロナウィルス予防

現在、全国的に新型コロナが拡がっています(2020年12月現在)。 

皆さまの中にも対策をどうしたらよいのか不安な方がいらっしゃるかと思います。

今回は、感染症専門医の立場から新型コロナウィルスにかからないための対策について述べたいと思います。

ただ、この辺りは専門家の中でも議論が分かれている所も多いため、あくまで個人の意見としてご理解下さい。

重要なポイントは、


1. 新型コロナは症状が出る2日前から周囲に感染する

2. マスク、ソーシャルディスタンスは自分も守り、他人も守る

3. リスクのある場所に行かない


です。


1. 新型コロナは症状が出る2日前から周囲に感染する

熱も咳もなければ大丈夫と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。

私が新型コロナで最も厄介だと思っているのは、症状が出る前から感染力がある点です。通常、インフルエンザなどは発症から翌日にかけてが最も感染力があります。そのため発症後にすぐ自宅にこもれば人にうつすリスクは低くなります。しかし、新型コロナでは発症前〜発症時が最も感染力が強いという特徴があります。今は元気でも明日明後日には発症してしまうかも知れません。そのため、元気で熱がない人と会う場合でも注意が必要ですし、逆に自分が元気でも、実は感染していて人にうつしてしまう可能性があることを意識する必要があります。そのため、症状がなくても下記の対策を徹底することが重要になります。


2. マスク、ソーシャルディスタンスは自分も守り、他人も守る

マスク、ソーシャルディスタンスは最も新型コロナ対策に効果があったという研究結果があります。それはなぜでしょうか。

それには新型コロナがどうやって感染するかを理解する必要があります。

新型コロナの感染パターンは

①飛沫感染…唾液のしぶきが直接口や目に入る

②接触感染…ウィルスの付いた手で口や目を触る

と言われています。新型コロナウィルスに関しては、①の方が重要だと考えられていて、マスクとソーシャルディスタンスは①を防ぐことができます。メガネやゴーグル、フェイスシールドなどによる目の保護も効果がある可能性があります。

しかし、この2パターンだけでは説明がつかない拡がり方だと個人的には考えていて、もう1つのパターンが少なからずあると思っています。それが「エアロゾル」感染です。エアロゾルというのは、飛沫がさらに霧状に細かくなった粒です。

このエアロゾルは非常に細かいため、空気中を漂い、呼吸によって肺に直接入ってしまいます。実はエアロゾルは医学的にはまだはっきりした定義がなく議論のあるところですが、クラスターの発生などエアロゾルが存在するならば説明がすっきりとつく状況が多いのです。

そして、実は一般に流通しているマスクではエアロゾルのような細かい粒子は防ぐことができません(N95という特殊なマスクなら防げます)。

それでもマスクが重要な理由は、感染者がマスクをすると自らのエアロゾル発生を大幅に防ぐことができるからなのです。

つまり、マスクは自分のためだけでなく周りの人のためでもあります。

そして、それは前述の1.と合わせると無症状の時でもマスクを付けることに意味があります。


3. リスクのある場所に行かない

これは当然のことだと思われるかも知れません。

ではリスクが高い場所とはどんな所なのでしょうか。

これは先ほど述べたエアロゾルが発生しやすい場所だと私は考えています。

エアロゾルは、くしゃみ、咳はもちろん、歌を歌う、運動をする、大声で笑うなど、大きい呼吸で発生することが分かっています。エアロゾルの発生はマスクをしていないと防ぐことができません。

そして換気が悪い場所で空気中にしばらく漂います。

つまり、リスクが高い条件とは、

・不特定多数の人が集まる(=ソーシャルディスタンスが取れていない)

・マスクをしていない人が多い

・屋内でかつ換気が悪い

という場所になります。

このような場所を可能な限り避ける、ということが一番の感染対策になります。また逆に、介護施設ではこれらの対策を徹底することがクラスター発生を防ぐことに繋がります。ちなみに、空気清浄器は効果がまだ十分に検証されていないため、これに頼りすぎることは逆に危険です。しっかりと換気を行うか換気設備を強化する必要があります。


新型コロナウィルスについてはまだまだ未知の部分が多いのが現状です。そのような中でも、できることを着実に行っていくことが一番確実な対策だと思います。


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