熱が出ちゃった!どうしたらいい!?
在宅療養をしている中で、最も良く遭遇する症状の一つが発熱です。
しかし、熱にも様子を見て良いものからすぐに受診した方が良いものまで、原因がたくさんあります。
ここでは、熱が出た時に慌てないよう、注意すべき事柄について述べさせて頂きます。
まず、チェックすべきは「いつから」「何度くらい」の熱が出ているのかです。
印象としては、39℃台の熱が突然出た場合には早期の対応が必要なことが多いです。
一番注意すべきなのは、細菌による感染症です。在宅で頻度が多いのは肺炎、尿路感染、褥瘡の感染などです。抗生物質を使うことで良くなりますが、放っておくと重症化する恐れがあります。
以下に該当する場合は細菌感染症の可能性が高いと思われます。
寒気がしてガタガタ震えている
元気がなくて反応が鈍い
食欲が極端に落ちている
上の血圧が何回測っても100未満
脈がいつもより30回以上速い
呼吸が荒く苦しそう
痰が絡む咳が増えた
尿が濁ったり血が混じったりしている
赤く腫れている箇所がある
これらのサインが見られる場合にはすぐに訪問看護や医療機関にご相談下さい。
一方で、熱が出ていても心配ない場合も多いです。
よくあるのが、いわゆる風邪と言われるウィルス感染症、脱水や室温の影響といった原因です。また、飲み込みの力が落ちている方では、明らかなムセがなくても少量の誤嚥(肺に食べ物や唾液が入ってしまうこと)で熱が出ることがあります。この時、熱はあくまで一時的なもので自然に治ります。
これらの場合、37℃台程度の微熱であって、ご本人の活気もあるようなら、水分を多めに取ってもらい、場合によっては解熱薬も使いながら様子を見ることも可能です。
熱が出たときの対応について、主治医の先生と予め相談しておきましょう。
なぜ在宅療養で医療介護連携が必要なのか?
■別の領域として語られてきた医療と介護
「医療と介護とは、在宅生活という車を走らせるための両輪である。」
私はそのように思っています。
しかし実際には、医療と介護はこれまで別の領域として語られることが多かったかと思います。
今となってはお恥ずかしい話ですが、実際私も病院に勤務している時は介護の領域に関心がなく、知らなくても何とかなっていました。
それはなぜだろうと改めて考えてみたところ、それは成り立ちの歴史にあるのでは、という一つの考えに思い至りました。
医療は、医療法の第一条に書いてある通り、健康の保持、つまり病気がない状態を維持することが根底にあります。現在の医療法が成立したのは、まだ戦後間もない昭和28年で、この時代の医療の役割はとにかく医療水準を上げ、元気に働ける人を増やすことでした。
それ以降、病院はいわば「修理工場」として生活とは切り離されたところにありました。そして「修理」が終わればまた生活の場に戻る、という流れができました。
しかし、その後だんだんと高齢化が進むにつれ、従来の制度では限界があり、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態」、つまり生活において介護が必要となった方を対象とした介護保険法が平成9年に成立しました。
このように、医療と介護ではそもそも背景が異なっているということが、これまで医療と介護が分離してきた原因ではないかと思います。
私もそうでしたが、医療者は治らないこと(例えば老衰で食が細くなったり)を「敗北」と捉えてしまいがちで、そのため「手を尽くしましたがだめでした。あとは介護の問題ですから、よろしくお願いします。」となってしまいます。
■これからは「個人の尊厳の保持」を共通の目標に
しかし、人口の4人に1人がご高齢の方という未曾有の大変化の時代になると、当然状況も変わってきます。
在宅では、医療、介護ともにその方の生活の一部となります。
それぞれが今までの価値観に沿って、独立してそれぞれの仕事を行なっていくのではご本人にとって不利益となってしまいます。
私は在宅医療の経験を通じて、これからの時代に必要なことは、医療法、介護保険法両方に書かれている「個人の尊厳の保持」を皆の共通の目標とすることだとと思っています。
私たち医療者は、介護のプロにはなれません。しかし、在宅生活で「個人の尊厳を保持」するためには介護のことも知らなくてはなりません。
また逆に、介護に関わる方々にも医療のことを知ってもらえたら、ご本人の生活の質もより良くなるかも知れません。
まだまだ難しいですが、皆様と一緒に「すべての人が最後まで尊厳を持って暮らせる世の中」を創っていければと、そんな風に思っています。