2021/07/20
介護の排泄、お悩み解決!
「オムツがえが多くて大変」「トイレに行くのが心配…」
介護の中でも、特に「排泄」でお悩みの方は多いのではないでしょうか。
特に今まで自分がそんなことに関わるとも思ってなかった中で、いきなりそのような状況になったりすると本当に大変な思いをされることがありますよね。
排泄は、衛生面だけでなく、羞恥心や尊厳といった人の根幹にも関わる部分でもあり、対応が難しいことも多いと思います。
今回は、ご自宅での介護で排泄対応に困っている方、これからご自宅で介護を始められる方に、在宅療養でよくある排泄のトラブルの原因と対策についてお話させていただきます。
■基本の考え方
動物は排尿、排便をするのに場所や時間を選びません。しかし、人はそういうわけにはいきません。
排泄というのはただ「排尿する、排便する」という動物的な行為だけではなく、その人のプライバシーや尊厳に深くかかわることです。
そのため、排泄のトラブルにあたっては以下のことに気を配る必要があります。
・羞恥心への配慮
本来、排泄は他人に見られずにするとてもプライベートなものです。仕方がないとは言え、排泄を他人にお世話してもらうことということは誰しも羞恥心を感じることです。
また、子供ではなく大人ということもあり、自分で出来ないことへの悔しさなどもあるかと思います。
そのため、なるべくプライベートな空間を作ってあげたり、本人に任せられるところは任せたり、見られる時間を短くするなどの配慮がとても大切になります。
・安全への配慮
排泄の時、転倒などの事故が起こりやすいというのは実際にデータとして出ています。
そのため、ご本人の残っている体の機能のなかで、安全な排泄環境を整える必要があります。
本来プライベートな行為である排泄時は気が抜けて油断しやすいこともあり、要注意です。
・習慣や価値観への配慮
排泄の習慣というのは人によって違いますよね。
例えば、男性であれば立ってしなければ気が済まない方もいれば、座ってする方もいます。
在宅介護を受けられる方は、これまでと違う排泄習慣にならざるをえないことも多いと思いますので、それを受け入れるには時間がかかる場合があります。
■まずはトイレで排泄できないか考えてみよう
当たり前ですが、トイレで排泄できればそれが一番いいことですよね。
以下に、対策可能な原因を挙げてみます。
1.トイレへの移動が不安
もし単純に『トイレへの移動が危ない』という理由でトイレにいけないのであれば、解決できるかも知れません。
足腰が弱ってしまったためにトイレに行けなくなってしまった、という方は多いのではないでしょうか。
・リハビリ
もちろんすぐに効果が出るものではありませんが、やはり地道なリハビリは大切です。
個人差はありますが、ご高齢であってもリハビリによって回復できることは結果として示されています。
また、今はトイレに行けている方でも、これからもずっとトイレで排泄できることを意識して早めにリハビリを始めることもとても大事です。
・手すり
何もないと転んでしまう危険があっても、支えがあれば歩けるという方向けです。
手すりの取り付けは介護保険が使えるということはご存知でしたか?
ケアマネジャーさんや福祉用具店へのご相談してみてください。
また、手すりがあっても足元でつまずくこともよくあります。凹凸がないかなどもちゃんと確認して気をつけてください。
・歩行器や杖を使う
手すりだけでは不安な方は、歩行器や杖を使ってトイレに行くことをオススメします。
補助となる器具は積極的に活用しましょう。
・ベッドをトイレの近くに移す
トイレとベッドが離れていて心配、という場合には、ご自宅の間取りにもよりますがベッドをトイレの近くに移動させるということを考えてみてはいかがでしょうか。
部屋のレイアウトを変えただけでご自宅での生活環境が良くなったというのもよく聞く話です。
・失禁してしまう
失禁の原因はいくつかあります。女性の場合、骨盤底筋体操が有効な場合があります。
そのほか、お薬が効く場合もありますので、かかりつけ医へご相談してみてください。
・便座に座れない
トイレまでは行けるけど、足腰が弱って一度便座に座ってしまうと自力で立ち上がれないという場合もあります。
そのような場合には、「補高便座」といって座面が高くなった便座を使うと立ち座りがラクになります。
2.おしっこに行きたい感覚(尿意)がわからない
脳梗塞の後遺症などで尿意がわからないためトイレにいけず、オムツにせざるを得ない方もいらっしゃると思います。そんな時は以下の方法でうまくいく場合があります。
・時間を決めてトイレにいく
人はだいたい同じ生活をしていると、排尿の時間もだいたい決まってきます。
まず、オムツが濡れるタイミングを数日記録してみましょう。
そうするとおおよそ尿がたまってくる時間がわかってくるはずです。
そのタイミングでトイレに行って尿を出してもらいましょう。
オムツが濡れたタイミングを正確に知りたい場合は、こんな道具もあります。
・DFree
膀胱にたまった尿の量がセンサーで分かる器具が販売されています。
これがあれば排尿のタイミングがより正確にわかります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
■トイレには行けないがオムツはイヤという場合は?
・ポータブルトイレ
ベッドのわきに置けるトイレです。
トイレまでは行けなくても、ベッドから移れる方なら利用できます。
難点としては、臭いが気になる、手入れが大変ということがありますが、現在は消臭機能がついたものがあったり、使い捨ての袋が使えるものも出ています。
あとは木目調で、一見普通のイスに見えるものもあります。
福祉用具店さんに聞くと色々と教えてくれるので、要望に合わせて聞いてみてください。
・集尿器
ベッドから自力では降りられないけども、手はしっかりと動かせる方にオススメです。
陰部にあてるだけで尿を自動的に吸い取ってくれます。
しびんではこぼれてしまうことがありますが、集尿器ではそのようなことはありませんので安心です。
夜間のおしっこが多い方にも良いでしょう。
ポイントとしては、寝たままでは排尿しにくいので、使う前に体を起こして座った状態に近づけてから使うと排尿しやすいと思います。
こちらも福祉用具店さんで取り扱っています。
■オムツがえの回数が多い
特に夜中のオムツがえは本当につらいですよね。
そんな時は、吸水力の高い尿取りパッド(1000cc程度の吸収量があるもの)を使ってみると良いでしょう。
夜のみ、パッドを変えるだけでも夜はぐっすり眠れるということもあります。
まず試してみたいという方は、福祉用具店さんに商品のお試し品を頼んでみてください。
また、尿意があり、使える方であれば先ほどの集尿器を試してみてもよいと思います。
あとは、排尿の回数が多い場合は膀胱炎や過活動膀胱といった病気が隠れている場合もあります。
一度かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
■その他のお悩みに
今回は排泄トラブルの対策についてお話させていただきました。
今回取り上げた内容以外でも、排泄についてさまざまなお悩みがあるかと思います。
日本コンチネンス協会というNPO法人では、排泄にまつわるお悩みの電話相談を受けてくれます。
排泄にまつわるお悩みがあり、なかなか相談できる人がいない方など、こちらにご相談されてみてはいかがでしょうか。
また、おくすりで解決できることもあります。
かかりつけ医の先生にご相談してみましょう。
私たちの医師相談サービスにもお気軽にご相談ください。
参考文献:排泄ケアガイドブック(一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会編)
在宅医療・介護のお悩み解決プラットフォーム
これからの介護がご不安な方に
安間 章裕(アンマ アキヒロ)
日本内科学会認定総合内科専門医・日本感染症学会認定専門医
2010年 浜松医科大学医学部卒業。亀田総合病院総合診療科、感染症科での研鑽を経て、茨城で在宅医療の立ち上げを行う。その後、地元である静岡県で感染症業務、在宅医療に携わっている。