「むくみ」はどうやって対処したらいいの?
むくみは、在宅療養でよく目にする症状の一つだと思います。しかし一方で、むくみ=何かの病気というイメージがあるのではないでしょうか。
ここでは、むくみを見たときにどんなことが考えられるのか、どんなことに気を付けたらいいのかについて述べます。
まずは、「いつからなのか」「両足にあるのか、片足にしかないのか」を把握して頂ければと思います。
1. 両足のむくみ
「むくみは内臓の病気のサイン」とよく言われます。確かにそういった場合もあります。具体的には、心臓、腎臓、肝臓の病気が有名です。その他、貧血、ホルモン異常、栄養失調(かっけなど)でも起こり得ます。
しかし、実際にはこれらが原因であることは頻度としては少なく、最も多い原因は「静脈弁不全」というものです。もともと私たちの足の静脈には、重力で血液が溜まらないようにするために逆流防止弁が付いています。それがご高齢になると老化により弁が壊れてしまい、血液が足に溜まりやすくなってしまいます。
静脈弁不全の場合は有効な治療はなく、弾性ストッキングをはく、できるだけ足を挙げておくくらいしか対処がありませんが、逆に言うと命に関わる病気ではないため過度な心配は不要です。安易な利尿薬の使用は逆に脱水を引き起こす場合もあります。
ただし、もちろんむくみが重大な病気のサインであることもあります。
顔や体など全身のむくみ
体重増加
動いた時の息切れ
夜間の息苦しさ
咳や痰の増加
尿の量が減っている
顔色や手のひらが蒼白
などの兆候を伴う場合には主治医の先生に早めにご報告して下さい。
あと、忘れてはいけないのはお薬が原因となることもある、ということです。
代表的には高血圧の薬である「カルシウム拮抗薬(例. アムロジピン)」や、鎮痛薬です。これらの薬を飲んでいる方の場合は一度主治医の先生にご相談してみて下さい。
2. 片足のむくみ
この場合でよくあるのは、お腹の中のがんなどを手術したことがある方に、術後から見られるむくみです。これは「リンパ浮腫」といってリンパの流れが手術の影響で滞ることが原因です。これも根治治療はなく、やはり弾性ストッキングや足を挙げることで対処します。
片足のむくみで注意しなければならないのは、「深部静脈血栓症」という病気です。エコノミークラス症候群という名称の方が一般的かと思います。
これは、足の深い静脈に血の塊ができ、それがちぎれて飛んで、肺の血管に詰まることで呼吸ができず、最悪の場合命に関わる病気です。長時間同じ姿勢でいたり、脱水傾向の時に起こりやすくなります。痛みを伴う場合もあります。
熱や赤み、痛みを伴う片足のむくみは、「蜂窩織炎」という細菌感染症も考えられ、早めに抗生物質で治療する必要があります。
今までなかった片足だけのむくみが急に出てきた時には主治医の先生に早めにご報告して下さい。
3. 終末期のむくみ
最期の時期が近くなるとむくみが出てくる方がよくいらっしゃいます。これは栄養状態や心臓の状態など色々な要素が関わっています。最期が近いとどうしても起こり得ることですので、ご本人が辛くなければ無理に治そうとしなくても大丈夫です。もし点滴をしている場合は、点滴を減らす、もしくは止めることで改善が見込めるかも知れませんので、主治医の先生と相談してみて下さい。
また、この時期はむくみが強いと褥瘡ができやすくなるので、エアマット導入など圧がかからない工夫が必要です。
以上、在宅療養で遭遇するむくみについて述べさせて頂きました。
一言にむくみといっても、様子をみていい場合、治療が必要な場合があります。その他の注意すべき兆候がないか、慎重に観察されることをお勧めします。