突然「息が苦しい…」と言われたら!?
「息が苦しい」という症状のことを、医学用語で「呼吸困難」と言います。
呼吸困難の背景には、重大な病気が隠れていることが多く、注意を要する症状の一つです。
この項では、在宅療養をしている方が「息が苦しい」と訴えた時に考えるべきことと、その対応について述べさせて頂きます。
■考えられる原因
呼吸困難は、一般的には体に取り込まれる酸素が足りない時に、脳内にあるセンサーがそれを感知して自覚します。
皆さんも息を止めたり、酸素の薄いところへ行くと息苦しさを感じるのではないでしょうか。
そのため、呼吸困難を訴える場合には体に酸素が足りなくなる原因を考えます。その際には酸素が体にどのように取り込まれるのかに沿って考えると分かりやすいと思います。
まず、酸素は私たちの鼻、口から入り気管、気管支を通って肺に入ります。そして肺から血液の中に酸素が取り込まれるのです。酸素をたっぷり取り込んだ血液は、心臓を通って全身に運ばれます。
これらの経路から考えますと、呼吸困難の原因は、
①気管の問題
②気管支の問題
③肺の問題、
④心臓の問題
⑤血液の問題
に分けると考えやすいでしょう(厳密にはもう少しあります)。
気管の問題で一番多いのが、気管に物が詰まってしまう、いわゆるちっ息です。よく誤嚥と混同されがちですが、誤嚥は肺に入ってしまうので、ちっ息とは別ものです。
気管支の問題で代表的なのが気管支喘息です。肺の問題では、肺炎や肺気腫、気胸(肺に穴が開いてしぼむ病気)が多いです。心臓の問題では、心不全といって心臓の機能が弱り、肺に水が溜まってしまう病気があります。最後に、血液の問題では貧血が挙げられます。
■最も緊急なのはちっ息
今挙げた中で、最も急いで対応しないといけないのはちっ息です。
なぜなら、そのままでは数分で致命的となってしまう状態だからです。
食事中に突然苦しがるような状況では、ちっ息を考えてすぐに対応して下さい。
まず、必ず行うべきは「ハイムリック法」という処置です。これは腹部突き上げ法とも言い、ご本人の背部から腕を回して、へその上あたりでこぶしを作り強く圧迫する方法です。
参考:日本医師会ホームページhttps://www.med.or.jp/99/kido.html
動画などもインターネットにありますので、一度手順をご確認頂き、練習しておくと良いと思います。
救急車を呼ぶのであればなるべく早い段階から呼ぶべきですが、救急車を呼ぶことが必ずしもご本人、ご家族にとって良い選択となるとは限りません。詳細は別の項にさせて頂きますが、救急車を呼ぶかどうかは予め決めておいた方が望ましいでしょう。
■それ以外の対応
ちっ息ほど一刻を争う事態ではないですが、その他の病気の場合でもすぐに診察を受けた方が良い場合が多いです。特に、唇が紫になっていたり、呼吸の回数が多く荒い場合は急いだ方が良いと思います。
熱を伴っていたり痰が増えている場合には肺炎が疑われます。元々喘息持ちの場合、「ヒューヒュー」と息をしたり、明け方に息苦しくなる場合には喘息発作の可能性があります。胸の痛みがあったり、元々心臓の病気をお持ちの場合、横になると息苦しい場合、むくみを伴う場合には心不全の可能性が高くなります。
貧血はなかなか分かりづらいですが、顔色が白かったり、歩くときに息切れがするような場合には考えられます。
呼吸困難の訴えがあった時に考えられること、およびその対応について述べさせて頂きました。もちろん精神的なものからくる場合も多々あるのですが、前述のように呼吸困難というのは重大な病気が隠れていることが多い症状です。また、息が苦しいというのはご本人にとっても辛い症状です。
もし訪問診療や訪問看護にすでに入って頂いている場合には相談してみましょう。