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care-eco's magazine

2021/02/02

褥瘡(床ずれ)の効果的な予防方法

在宅療養と褥瘡は、切っても切り離せられない問題です。 
ちょっと目を離した隙に、あらゆるところにできてしまいます。
褥瘡が治るには、大変な労力が必要になりますし、すっきり治らないことも多々あります。
できる限りの予防が最も大切だと思います。
今回は、在宅療養における褥瘡の予防についてお話させて頂きます。

■褥瘡は皮膚の異常ではなく全身の異常の表れ
褥瘡は、皮膚の血流が圧迫によって阻まれ、皮膚の組織に酸素が行きわたらずに、皮膚が死滅してしまうことで起こります。同じ部分が圧迫されているとたった2~3時間で褥瘡ができてしまうと言われており、そのために2時間おきの体位交換が推奨されています。
しかし、健常な人では同じ条件でも褥瘡はできません(高速道路の運転で褥瘡ができる方は滅多にいないと思います)。それは、栄養、血流、むくみなど、様々な要因が重なって起こるからです。つまり、褥瘡は皮膚だけの異常ではなく、全身の衰弱によって起こる症状だと言えます。

■褥瘡のリスク
ご高齢になるとどうしても寝ている時間が多くなってしまいますが、その中でも褥瘡ができやすい方、できにくい方がいます。
これまでの研究では、寝たきりであることに加えて以下の要因がリスクとして分かっています。

・骨の突出
・関節の拘縮
・栄養不良
・皮膚の湿潤(排泄物や汗など)
・むくみ

つまり、これらのいずれかに該当する方は(多くの方が複数該当すると思いますが)、特に褥瘡ができるリスクが高いものとして注意する必要があります。

■具体的な対策について
行うべき予防策は以下の4つです。

・マットレス選択
・ポジショニング
・スキンケア
・拘縮予防
・栄養

①マットレス選択
褥瘡予防においては、体にかかる圧力を分散させて、一か所に圧がかかり続けないようにすることが大事です。そこで体圧分散寝具(マットレス)を使います。
今は色々な種類が出ていますが、推奨されているのは、
「粘弾性フォームマットレス(ウレタンマットレス)」と「圧切替式エアマットレス」の2つです。
この使い分けですが、ざっくり言うと

・自力で体位交換ができる、もしくは頻回な体位交換が可能な環境
粘弾性フォームマットレス

・自力で体位交換ができず、頻回な体位交換が困難
圧切替式エアマットレス

を目安にして頂ければと思います。さらに、すでに述べたような褥瘡リスクのある方には、二層式(三層式)エアマットレスが推奨されます。
耐圧分散寝具を用いると、通常2時間ごとの体位交換は4時間ごとまで延ばすことができます。最近は自動体位交換機能が付いているものもありますので、これらをうまく使うことで介護する方の負担減少につながるかと思います。
ただ、機能の良いものは費用もかかりますので、機能と費用のバランスを考慮して最適なマットレスを選択する必要があります。

注意点としては、エアマットレスを使用していても四肢には褥瘡ができることがあります。
踵は浮かせ、手足を全体的にカバーできるウレタンクッションなども使うと良いと思います。

②ポジショニング
ポジショニングとは姿勢のことです。寝ている時の姿勢に気を付けることで褥瘡を防ぐことができます。
体の軸をまっすぐにすること、一点に圧がかからないようにすること、体がずれないようにすることが原則です。
横向きにする際、真横にしてしまうと耳、肩、転子部、くるぶしに褥瘡ができやすくなります。90°ではなく、クッションなどを入れて斜め30°を目安に横向きにすると良いでしょう。

③スキンケア
ムレや乾燥は皮膚を弱くし、褥瘡をできやすくしてしまいます。皮膚をやさしく清潔に保つこと、保湿剤をこまめに充分塗ることが褥瘡予防でも重要です。

④拘縮予防
すでに述べたように、関節の拘縮が褥瘡の強いリスクになります。
訪問リハビリなどを導入して、拘縮を和らげることを検討しても良いと思います。

⑤栄養
栄養が十分摂れていない方では、栄養状態を改善することで褥瘡が予防できます。
特に高カロリー高タンパクの食品が良いとされています。食事量が減ってきている方が多いとは思いますが、栄養補助食品をうまく組み合わせることで栄養状態が良くなることも多々あります。

以上、褥瘡の予防方法について述べさせて頂きました。
褥瘡を完全に防ぐことはとても難しいですが、褥瘡はQOLの低下につながってしまうので、少しでも減らすことができればと思います。

参考文献:日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(4版)」2015